星空刺繍


ねえ、嬉しいやありがとう、幸せや大好き、

伝えなきゃいけない言葉は、トキメキの衝撃で吹っ飛んでしまって、

私は指輪と近藤君の目を一秒ずつ交互に見るしかできない。

この調子だと、乙女心の真剣レベルが表現されたまつ毛が外れてしまいそうだ。


鼻血が出るぐらい嬉しいし、よだれを垂らすぐらいありがたいし、

耳から湯気を発射できるぐらい幸せだし、毛穴から汗を噴くぐらい大好きなのに、

生放送でテンパる新人みたく、初恋初心者は無言を貫くのみ、


可愛い反応をして恋人を喜ばせなきゃっていう知識はあるにもかかわらず、

行動する実力が不足気味な自分が情けない。



薬指のサイズを教えたのは誰?
プライバシーの侵害でしょ。


もう最低だ。
近藤君ってイケメンに甘えず中身を鍛え、世間の大人に比べ洞察力が素晴らしいんだから狡い。

赤面する私の顔芸で、

「偉い、辞書引きやんと読めたな。意外とお利口さんじゃん」と、

単純そうで複雑な心理をガッチリ汲み取ってくれるんだもん。


いちいち報告しなくても、察してくれるところに私は惹かれたんだと思うし、

今後もしつこく惚れていくんだろう。



刻まれた言葉はオーで始まる。


高校一年生の二月十四日へリンクする合言葉。

二人の少年少女が青春を都合良く解釈したおまじない。


あの日を語れば女子高生の正解。
あの日を語れないならばモテ子の資格ナシ。

せっかく頭が良いのに、女の子の趣味が悪い近藤君のものさしってなんだかセンスが良い。