星空を惜しむように歩く道のりの長さみたいに、
オルゴールがゆっくりと進むこの部屋は愛で真空パックされてしまっている。
ツリーを飾り付けする日は、テッペン星を取り合う関係が恒例行事でありたい。
好き、すき、スキ。
増える一方、折れ線グラフでありながら、恋の一筋が折れる気配はなく、
地面に向かう日は訪れず、
夜空を突き破って宇宙より先のお花畑の国まで到達してしまうんだろう。
この三流両思いは儲け市場で金のなる木で、優良企業だ。
「……。」
彼氏のシャツとカーディガン、彼女のワンピースの三枚を経て二人の体温が平均される今、
まだ無理だけど、少し気持ちに変化が起こったのかもしれない。
ヘタレお姫様の働きで、王子様は化石の魔法にかけられてるんだけど、
まことに勝手ながら、早く呪いを解いて恋人気取りの女の背へ腕を回してほしい。
ギュッじゃなくて、そっと。あくまでそっと。
現代っ子はニュアンスを察する能力が低いため、いちいち説明してやるなら、
一瞬で溶ける雪を触るように、弾けるシャボン玉を包むように、
繊細な桃を掴むように、神聖なベールをめくるように、
私を丁寧に優しく淡く甘やかしてほしくなった。
今日は一年に一回しかないクリスマスイヴなんだし、
恋人っぽく男前に慰めてくれたらいいのに。
まあ、今日はたいてい一日に一回しかないんだけれど、
早く手を伸ばしてくれたらいいのにと、ロマンチック念力を送ってみる。



