ベッドに男の人と乗るのが、お父さん以外で初めての今日って、
すごく胸が苦しくなる。
仲良しの子が転校するお別れ会みたいに、ストリングスの伸びが最強なクラシック曲を聞いたみたいに、
小学校時代に晩御飯を楽しみに帰る郷愁にかられる夏の夕暮れを見たみたいに、
唇が震え鳥肌が立ち、涙が溢れるのは、贅沢な今に心が痺れるせいだ。
ねえ、異性の前だと態度が違う子を否定して、自分は決して可愛くならない人は、
甘えたい癖にプライドが高くて殻を破れない弱虫なだけだと思わない?
『彼氏は大人だし』と便利に位置付ければ、どんな私でも受け入れてくれると意気込み、
迷子になった子供を見つけ出した親の勢いで、さっきから抱きしめてた近藤君を、
もっともっと強く縛り付けた。
二人の体重で痺れる腕や、ベッドの足側に頭を向けてる自分たちのお行儀の悪さも関係なく、
まだ今は緊張する近藤君特有のまどかな香りに落ち着くようになれたら、
幸せなんだろうなと女の子らしく夢を見る。
透き通る初恋を教えてくれたのは、
近藤洋平、あなたでした。
……って、静かに告げて軽く微笑めばパーフェクトガールだけれど、
やっぱり努力が足りなくて、
『透き通る初恋を教えてくれたのは、
近藤君を好きになった高校一年生の田上結衣でした』って、
本人に熱いリクエストをされたら、いつでも半笑いでほざいてあげる。



