星空刺繍


無駄に心臓が高鳴る今日は、そう、中学時代から憧れた恋人と過ごすクリスマスイヴだ。


朝からテレビ画面には雇われトナカイとサンタが度々登場するし、

冴えない寂れた文房具屋さんのBGMも客層にはそぐわないポップなクリスマスソングだし、

カラオケの店員さんがややテンション高めに仲間内で褒めあったコスプレをしているし、

世界中の皆が皆、今日は好きな人に会いたがる日だと知っていた。


くるくる回ると腰から膨らむドレープがお気に入りのドレッシーな紅色のノースリーブに近い半袖ワンピースを着て、

引き締め効果が期待される黒いタイツを合わせ、

裾のフリルが可愛い黒のお尻まで隠れるロングカーディガンを羽織っている。


家柄が良いお嬢様でもお食事に行けるあまり気取った感はなく、

けれどお上品な昔のよそ行き着みたいな雰囲気のファッションが冬場は好きで、

春場はもっと軽やかなものをチョイスして、そうやって四季で系統を変えるのが楽しい。


私はナルシストのせいで、彼氏目線で自分が一番可愛く映る正解コーディネートを見極めるセンスがある。

つまりそういうこと。
クリスマスイヴの田上結衣のオシャレは、

近藤洋平にとって最強にときめく愛おしい女の子って訳だ。


だって、今日は二人にとってそこそこまあまあぼちぼち幸せな記念日になる予定らしいから、

バッチリ着飾りたいし、

単純にプリクラを撮る用に、クリスマスモードのおめかしは重要だ。