けれど、いざ肌に触れられると怖かった。
絶対ワンピースを脱ぎたくないって焦った。
ねえ、近藤君を大好きだと知ってるのに、私は全部が嫌だった。
この半年近く散々待ってもらったくせに拒否したりなんかして、
だったら今日この誘いにのるべきじゃなかったんだ。
できないなら、無理なら、泣くなら、
二人きりにならないローカル遊園地に行けば良かったんだ。
あの時、頷いたらいけなかった。
近藤君は優しい。近藤君は凄く優しい。近藤君は絶対優しい。過度に優しくて困る。
高校二年生らしく、十七歳らしく、同級生の男子たちみたいに、
理性なんて忘れる時があったっていいんじゃないかな。
彼女の我が儘なんか無視して乱暴に押し倒せるのに、
拒絶された苛立ちをぶつけて抱いてしまえるのに、
怒ったり呆れたりせず笑ってくれるなんて、甘やかされすぎて、
どうしたらいいのか分からなくなる。
だって、私は好きな人でも強引に服を脱がされたら泣くし、大切な人でも一方的に始められたら嫌いになるし、
特別な人でも力任せにやられたら別れるし、最愛の人でもこちらの気持ちを尊重されなかったら軽蔑するし、
一番慕う人でも男ってだけの近藤君に変身するなら引く。
そういう嫌な奴が田上結衣だ。
だから、ねえ、そんな彼女の価値観が分かってるせいで、彼氏はいまだ触れてきやしない。
こんなに良い人は、他に居ないんじゃないだろうか。
胸の真ん中がふわふわ綿菓子で埋まったらしく、息苦しいのに嬉しい。



