星空刺繍


私は近藤君の美的感覚で可愛いと思われる人でありたい。


たとえば日曜日の大型ショッピングモール、割れ物が多い雑貨屋さんの場合、

ベビーカーをおしている母親が、謙虚に『邪魔してすいません』と一ミリ首を下げるなら、

喜んで通路を譲るし、見えないパパへの好感度がアップし、

加えて、すれ違い様に子供へ微笑んであげたくなるけれど、


皆が進路を譲ってくれて当然のはずなのにと、避けない奴には『気が利かないわね』的な発想になるママと、

ベタベタ商品に手を伸ばす子供、

更には自分の世界へトリップして買い物を続けるパパと遭遇した際、

見知らぬ家族全員へ大人げなくイラッとする女子が、

彼氏の価値観だと魅力的な彼女像になるんだと、


学年で二番目にイケメンと呼ばれる近藤君って、そういうところがあるんだなって、

クラスで異性に慕われている私はなんとなく付き合う中で知って、

ますます惚れてしまってた。



ねえ、好きな人のクリスマスの幻想に近付きたかった。


服だって脱がせ易いようにワンピースを選んだし、

本当はアップヘアにしたかったけれど寝転んだら乱れるだろうからゆるいカールのストレートヘアで我慢したし、

というか近藤君はきっと手櫛を好みそうだと思ったからだし、

タイツを合わせる予定だったけれど、スカートをめくられたら間抜けだと考えたし、

ウエスト周りに型が残ったら嫌だし、

だからニーハイソックスを伸ばしまくってパっと見はタイツになるようにしたし、

下着だって胸元が綺麗に見えるタイプを奮発して買ったし。


そう、初恋に甘えず私はきちんと準備してきた。



なのに、