星空刺繍


『教室の時計を七分早めるクオリティーの低いドッキリで、先生をはめてはしゃぐ女子高生』が、

近藤君へアプローチしたい田上結衣の理想像だ。


ねえ、嘘つきガールの彼女なんかを、きっと彼氏は見破っている。



初めて好きになったのも初めて告白したのも初めて恋人になったのも初めて手を繋いだのも、

初めて私が一緒に夜を過ごすことになるであろう人も近藤君なんだけど、

向こうはきっと何個か、もしくは全部が違う。


中学の終わりから高校の最初まで、近藤君にはちゃんと付き合っている子がいた。

その子に笑いかけたのか、その子と毎日メールをしていたのか、

その子の頭を撫でたのか、その子の服を脱がしたのか、

そういうことは知りたくなくて、確かめたくなくて、

学生ネットワークでとりあげられる交際遍歴なんか聞こえないふりをしたくて、

結果、元カノの存在を薄らぼんやりと霧に隠し、私の中で勝手に消去している。



『体育のサッカー試合、じゃんけんで負けたキーパーを務めるも、ボールに翻弄され見事コケて爆笑する男子高生』が、

私にとっては近藤君の中身なのなら、

皆が教えてくれる過去の情報を集めたって、それは事実なのかな?


近藤君は触れない。
言わないなら、私は怠け者だし尋ねるのが面倒臭いからと、

何も分からないままでいい。


それが付き合うってことなんじゃないかなって信じたい。

たとえ、近藤洋平を演じる嘘つきボーイでも、私はそんな近藤君を好きなことに変わりはないでしょう。


それとも、見苦しく嫉妬したくないからと、

元カノのあれこれを気にしないフリを続け、プライドを守る私はやっぱり幼いのかな?