星空刺繍


自分が第一の田上結衣は、お気楽適当ガールでありたいから、

本性は真面目だとしても、本音をさらけ出す素直な素人よりも、

ダラダラしたユニークな子を演じる女優の道を選びたい。


付き合って九ヶ月、近藤君にそんな秘密を一つも打ち明けていないどころか、自演しまくる私は、

彼氏に心を許せてないことになるのかな?

彼氏に嘘をついていることになるのかな?

ずっと彼女がこの調子なら、絆はないのかな?


努力の結果、困難を乗り越え今のオレたちがある的な交際ではなく、

成長しない交際を続ける私たちの愛は、やっぱり薄っぺらいのかな?



それでも不思議なことに、スーパーで会計を済ます際、

子供が店員さんにお菓子へシールを貼ってとせがむんじゃなくて、

お野菜やらケチャップやらと一緒に袋へ詰めて、

家に着いて、ようやく手にとる子に育てたがってる私の脳みそは、知られたくないんだけど、

絶対、近藤君は恋人の価値観をお見通しなんだ。


だけど、そんな意思疎通がはかれる素晴らしき精神力なんて二人には似合わないから、

そこには触れたくない。


いちいち言葉や態度にして伝え、感動するよりも、

気づかないフリをして、相変わらずヘラヘラしてる癖に実は裏で黙って愛を重ねたがってる私を、

優れた近藤君は分かってるんだろうけど、だからこそ彼氏は鈍感なフリが上手で、

毎日毎日、昔の小学生みたいにナゾナゾで爆笑できるテンションを真似てるんだ。


ほら、私たちって便利な持論に基づけば、

結構少しかなり割と抜群にボチボチお似合いな運命の相手なんじゃないかな?