クリスマスの今日から、九ヶ月と少し遡れば、
付き合いはじめたホワイトデーのあの日。
初めてキスをするのを近藤君は普通の高校二年生なのに、四ヶ月も待ってくれた。
七夕のあの日から始まった唇の表面に触れるだけのそれに、
回数が増えようが時間が加算しようが、全然慣れず硬直する彼女のせいで、
のぼせるような種類に変化するまでは、更に一ヶ月も足踏みをしてくれた。
交際期間半年が過ぎると、緊張はするものの私だって照れよりは嬉しさの方が勝っていた。
だから、順調にステップアップしていく二人のこの先の展開は、余裕で予想ついていたんだ。
中学一年生の男子がファンになる清純派アイドルみたいな鈍感無垢慕われガールじゃないから、
梅雨ぐらいで彼氏が時々したがっていることは気付いていたし、
夏休みぐらいで彼氏がストイックの悟りを拓いたことは読めていたし、
文化祭ぐらいで彼氏が一生懸命我慢して澄ましてくれていることも分かっていた。
だって、手を洗った流れで前髪を直す近藤君の思考なんか見えちゃう。
ねえ、高校生にとっては一番恋愛に夢中なクリスマス、
先月予定を立てる時点で覚悟を決めた。
私だってその気で来た。
引かれたくなくて、なんとなく近藤君がイメージする田上結衣という女子高生をなぞっていたなんて、
彼氏はアホだから、想像さえしないんだ。



