近藤君の胸にぴったりホッペを寄せると、
ピアスが痛む耳の奥で、貧乏揺すりより速い脈が届き、
それだけこの人は私に緊張してくれているんだって嬉しくなるんだ。
安っぽい愛が聞こえるから、馬鹿なふりして幸せになれるんだ。
たとえば、今自分の下にいる彼氏が同級生の男子だったなら、
きっと上に乗った恋人の背中なり肩なりに手を回し、
きつく抱擁をして艶っぽく囁いている最中だろうに、
近藤君ってば、相変わらず握り拳を作ったままで、金縛りみたいに動きやしないし、
さっきから、返事をしない彼女に独り言を続けるばかりする。
学生恋愛真っ只中な割に、おかしなことに全然イケメンらしく触れてこないし、
紳士らしく甘さを醸し出してこない。
そう、せっかくのクリスマスなのに、彼はいつも通りの近藤洋平だ。
男子高生ビジョンだと渋いそんな判断を彼に強制させたのは、
十数分前の彼女の態度だろう。
暇人哲学を導くと、人間が自分で自分を嫌いになる時って、
多分、相手にばかり無理をさせる自分を治せない時なんじゃないかな?



