星空刺繍


「重いんだけど?」

高価でリピートが困難な化粧水や、口コミ評価が高い加湿器よりも肌に浸透して身体の内側から女の子を綺麗にするのは、

大好きな男の子の声だ。

あまり唇を広げずに零す近藤君らしいテンポは私の脈に馴染む。


ねえ、クリスマスほど世の中を恋愛一色に染めるイベントは他にないんじゃないかな。

お正月にバレンタイン、ホワイトデーに花火大会、誕生日にハロウィン、

どんなキラキラ行事よりも、一番高校生の胸をくすぐるのは十二月二十四日だ。


ツリーのてっぺんで輝く星と、夜空に煌めく星屑はどちらが美しいのかな。

大好きな人の肌と空調さえ操る暖房は、どちらがあたたかいのかな。


クリスマスの今日が楽しいとテンション高めな歌詞が人気の童謡は、

オルゴールになると切なく聞こえるのは何故?



「こら田上早く退け、重い圧死する」

あまりに私が抱きつくせいで、立ち上がることを諦めたらしく、

近藤君は脚を折り曲げたところで結局仰向けを続けていて、

私はというと、彼氏の両膝の隙間に倒れ込んだまま全体重を預け、

相変わらず嗚咽を止められずにいる。


怖がったこと、嫌がったこと、拒んだこと、泣いたこと、謝る項目が多すぎて困るばかりで、

涙の止め方さえ浮かばない。


それでも、