痴漢をしてませんと無罪を証明するサラリーマンみたいに、

両手をあげたまま綺麗に寝転んだ近藤君が、

押しかかってきた彼女と離れるべく、

慌てて両足を三角にして上体を起こすのが読めたから、

急いで私はシーツと彼氏の背中の隙間に腕を回して、強く強く抱きしめた。


剥き出しになった背中が本当は心細いのに、ぺたんこな胸が当たるのは絶対に嫌なのに、

そんな自分の事情より、何分も無理やり笑ってくれる近藤君に遠くへ行ってほしくなくて必死だった。



重力全部が愛情に比例すればいい。

どうせまだできないのに、こうやって触れたらせっかく我慢している彼氏がもっと対処に困るのは承知だけど、

力いっぱい抱きしめた。



勝手だって分かってる。
我が儘だって分かってる。
うざいって分かってる。


でも、嫌われてないって分かってる。
ブスだブスだと冗談ばかりの言葉たちが、好かれてるって自信をくれた。


「田上さん何キロ、重てぇから早く退けて。華奢な彼氏が潰れるって」

声に合わせて半音輪郭が持ち上がる。

耳へと溶ける言葉たちは直接私の鼓動を速める。


さっき、近藤君は寸止めでやらせない私にムカついただろうし、

結局リタイアで信用していない私に失望しただろうし、

ショックだったろうし、悲しかっただろうし、切なかっただろうし、格好悪かっただろうし、

せっかくのクリスマスにテンションがタダ滑りしたんだと、男の子の心情ぐらい把握している。


それもこれも原因は、イヴに浮かれていた彼女のせいだってことも、

天然おっとり純粋ガールじゃない私は自覚してる。


ねえ、ゴメンと直球で謝り媚びを売るのと、自ら服を脱ぎ機嫌をとるのはどっちが大人の女性なのかな?

子供にはオシャレな選択肢がない。