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披露宴の出し物の拙いハンドベルみたいな足並みで、好きな人の声とBGMのオルゴールが融合し、

柔らかく肌に落ちてくる。


涙で濡れたシーツの湿り気が不愉快だ。
無理な方向に捻ったウエストが痛い。
変に伸ばした右腕が痺れてきた。



「田上の結衣さん、聞こえてんなら返事しろや」


随分前、したくないと彼女に拒否られた彼氏は、すんなり身を引いた。


本当にそれで良かったのかと不安になる。



だって、一ヶ月前から今日この瞬間、するつもりだったんでしょう?

期待しただろうし、待ち侘びていただろうし、

それなのに甘ったるい途中で待ったをかけられたなら、たまったもんじゃないはずだ。

悪いのは近藤君じゃなくて、その気にさせておいて拒絶した田上結衣じゃん。


我が儘で無神経で最悪だと自覚しているからこそ、私って人間は相当嫌な奴だ。

そんな自分に気づいてなかったら、

晴れて無垢な天然で鈍感ガールの仲間入りができたのに残念、

悪口、冗談、皮肉、それが近藤君の優しさだと分かってしまっている。


やっぱり近藤君は狡い。
さっきからずっと、慰めようと話し続ける配慮で、ますます涙が溢れて止まらなくなる。


普段そんなキャラじゃないのに、女の子みたいに泣いてしまう自分がウザイし、

彼氏に負担をかけまくりな今の状況を打開しようとせず、乙女の国に引きこもる自分が欝陶しい。



なんかもう八つ当たりになるんだけど、うちの彼氏って頭がおかしい。

だって、十二月二十四日。
駄目なのは彼女だと明らかなので誰も咎めないだろうに、

むしろ同情票で大方が彼氏の肩を持つだろうに、

どうして近藤君は強引に私へ手を出さないのかな?