私は昨日、8年分の失恋をした。
思えば、8年前のあの時、部室のドアを開けたことがそもそもの間違いだったのかもしれない。
この恋は運命!なんてセリフは何回も聞いたことがあるけれど、運命的な失恋なんて聞いたことがない。だけど、もしあの時扉を開けたのが運命なら、この失恋もあの時に決まっていたことだったのかもしれない。
一目惚れだったわけじゃない。誰しもが経験するように、それなりのスピードで仲良くなり、ゆったりとしたスピードで私は慎二に惹かれていった。大学で同じサークルに入っていた私達は、12人いた同期の中でも特に仲が良かった。何でも話せるまで心の距離が近づいてきた頃には、彼の隣を歩けるのは私しかいないとすら思っていた。
そして、今か今かと告白のタイミングを伺ったまま、気づいたら8年経ってしまっていたのだった。
世間的に言うと天然なタイプに属するあいつは、無邪気に楽しんで、理不尽なことに精一杯怒った。心が折れる度にすぐに私の前で涙を流し、泣き疲れたら眠気に身を任せ私の肩で深い眠りに落ちた。酒に飲まれると、吐息がかかる距離で説教を始め、周りに面倒臭がられたりもした。
私の微かな想いに気付いてるのか気付いていないのか、ともかく慎二はそう言う奴だった。