いろはさまは、脳裏に田中さまの笑顔が浮かびました。


「いろはさんは何も心配要りませんよ。私に春をくれたのは、いろはさんの優しさです」


嗣実さまは、そっといろはさまの頬に触れました。


「以前からは考えられません。春の暖かさと光に、わたしは生かされています」


嗣実さまは、微笑みました。


「私もいろはさんのお役に立ちたいです」


ボンッといろはさまの顔を赤くされました。


「わたしは……嗣実さんの笑顔が欲しいです。それまで、頑張ります!」


嗣実さまは、口元を緩めました。


「いろはさんがいて下されば、大丈夫です」


二人は微笑み合い、夜は更けていきました。