一番星の愛情物語

何より、嗣実さまの告げた、会えないの言葉。


でも、メールと電話は欠かさず来る。


いろはさまは、月を見上げながら、大きく息を吐きました。


「遠い……遠いよ、嗣実さん」


いろはさまには、嗣実さまの気持ちがよく分かりません。


「第一、人は家の為にいるんじゃなくて、家が人の為にあるんだよ。……身分が違うのは、初めから分かってたはずだよ」


でも、といろはさまは、心の中で思いました。


きっと、田中さんには大切なものがたくさんあって、より自分に近いモノを優先したんだろう。


そんな事を思って、学校の最寄り駅に着いた。


車のクラクションが、耳に入った。


窓が開くと、蒼一さまが顔を見せました。


「いろはさん。こんな所で珍しいですね」