一番星の愛情物語

田中さまは、軽く笑いました。


「わたしの為に体が壊れていく嗣実先生も見ていられなかったし……何より、両親が頭を下げてばかりなのも嫌だった。壱星本家は優しいけど、外戚がね」


田中さまは、缶を口元に運びました。


「わたしは自己中だから、自分が幸せになりたかったの」


いろはさまは、ズキンズキンと胸が痛みました。


「嗣実先生は優しい。その意味に気付いたのは、今の彼と出会ってからね。来月結婚するの。彼の上司が嗣実先生だから、良かったら出席してね」


いろはさまは、缶の中身を少し残して、空き缶入れに捨てました。


「……お手数、おかけしました」


いろはさまは、帰りながら、色々と考えていました。


栢宮に生まれなかったら……田中さまの二の舞?


それとも、許容範囲外?