「早く、思うように感情を出しても大丈夫なお薬が出るといいですね」


嗣実さまは、口元を緩めました。


「大丈夫ですよ。一度に出さないようにするだけで……小まめに出せば。癇癪を出さないようにすればいいだけです」


二人がそんな話をしていると、白衣を着た女性が一人、近寄って来た。


「嗣実くん!珍しいわね、こんな所で」


嗣実さまは、いろはさまから手を離して、女性と向き合いました。


「まぁ、ちょっと。こちら……」


いろはさまを紹介しようとすると、いろはさまは既に姿を消していました。


「あれ?ごめん、また」


嗣実さまは、トイレに声をかけたり、携帯電話をかけても、通じない。焦りながら、自分の所属する総務部に向かった。


エレベーターから降りると、休憩所で男性社員と楽しそうに話すいろはさまがいました。