いろはさまは、慌てた。


「わたしが嫁入りする身です!わたしが伺うのが当たり前です!」


嗣実さまは、口元を緩めた。


「私が婿入りしても、大丈夫ですが?」


いろはさまは、唸った。


「……嗣実さんって、意地悪なんですね」


「いろはさんの、たくさんの表情をみたいだけです」


ちょうど、いろはさまのご自宅の前に着くと、女性が一人、スーツケースを持って立っていた。


「さきはちゃん?」


いろはさまの声で、女性が振り返った。


「いろは……って、壱星先輩!どうして壱星先輩と一緒なのよ!」


いろはさまも、嗣実さまも、首を傾けた。


「嗣実さん、長女のさきはです。今は嫁に行っていますが」


嗣実さまは、軽く頭を下げた。


「ひょっとして、大学の?」