「えっ」


「誰でもって訳ではありませんよ。あの時、いろはさんだけが私の体調とケーキを心配していた。失礼ですが、怒っている姿が、とても愛しく感じました」


嗣実さまは、真剣な表情で言った。


「チャンスは逃したくありません。だから、私は今、必死です」


嗣実さまは、軽く咳をした。


「すみません、ちょっと」


嗣実さまは、スーツのポケットの中から、薬を取り出して、水分と共に飲み干す。


「ぐ、具合……」


いろはさまは、心配そうに駆け寄った。


「興奮すると、体が言うことを利かなくなるので。定期的に飲んでいますから、大丈夫です」


いろはさまに微笑む嗣実さま。


いろはさまは、ギュッと嗣実さまの手を握り締めました。