電車で震えている時から、魅了されてしまったかもしれない。

鍋奉行の和兄が、せっせと鍋から小皿に移している間も、壱星部長は、飲み物を上手くずらしたり、足りないモノに目配りをしていたので、僕一人、動く必要がなかった。

「ほら、弥彦。たくさん食えよ」

「あ、うん」

和兄は、ニヤリと笑う。

「お前、壱星さんの前だから緊張してんだろ?」

僕は飲みかけのシークワーサーサワーを吹き出しそうになり、何度かむせた。

「大丈夫?」

壱星部長が背中が軽く擦ってくれたけど、その背中が熱い。

「日ノ出くんのお兄さん、わたしは日ノ出くんからみたらオバサンですよ?そんな事があるわけないじゃないですか」

和兄はクックッと笑う。

「まぁ、壱星さんの年齢は大体想像できるけど。許容範囲内ですよ」

和兄は落ち着いたのか、自分の小皿に盛ったモノを食べ始めた。

壱星部長は瞬きをして、頬を赤く染めた。

「あ、ありがとうございます……」

壱星部長は、白ワインをチビチビ飲んだ。

「弥彦はまだしたっぱだけど、将来有望だから。壱星さん、よろしく頼みます」

和兄の言葉に、壱星部長は微笑む。

「は、はい。わたしこそ……日ノ出くんを見習わないと。頑張ります」