花月は、真剣な瞳のまま告げました。


「自我がなくなりつつある限界に、いろはさまが現れて。嗣実さまは、蜘蛛の糸にしがみついたんです」


いろはさまは、嗣実さまを思うと胸が熱くなりました。


「他の人には、政略結婚って見えるんでしょうか……」


「誰がそんな事を?」


「あの、エステで」


「そうですか……。壱星は財閥としては古いですし。勝手に言う人もいます。ですが、事実無根です。無視して構いません」


「でも……」


「せっかくの結婚式。他人とはいえ、参考になりますよ?元気出して下さい」


いろはさまは、頷きました。


車に常備してあるミネラルウォーターを口元に運び、流れ行く景色を眺めていました。



しばらくすると、指定の美容室に着きました。