嗣実さまの部下の結婚式当日。


前日はいろはさまも嗣実さまの部屋にお泊まりになり、楽しい一時を過ごされました。


当日。


いろはさまは、一人早く目が覚め、嗣実さまの部屋を出て、散歩をしていました。


「本当に広い……」


朝靄の中、いろはさまがうろうろとしていると、スーツ姿の男性が一人。鞄を片手に歩いて来ました。


「あれ?桜梨の友達にしては大人びてるし?聖(ひじり)の友達にしては幼いし?」


いろはさまは、慌てて頭を下げました。


「栢宮いろはと申します。嗣実さんにはいつもお世話になりっぱなしで……」


「ああ~!嗣兄の。俺は三つ子の弟で、慧里。今日は結婚式に出るんだっけ。屋敷の外は危険だから、気を付けて。迷ったら、近くの部屋に入って、携帯使うといいよ」