一番星の愛情物語

「類司から聞いています。不安ですか?」


いろはさまは、頷きました。


嗣実さまは、少し悲しそうな微笑みを向けて、ほうじ茶を口元に運びました。


「まだ私が二十歳の時で。朝積みの薔薇のような少女でした。彼女は」


嗣実さまは、遠くを見つめていました。


「色々と意見や考えを言う彼女は真っ直ぐで。そんな彼女を支えたい、と思いました。でも、彼女から別れを切り出されました。このままだと、嗣実先生が消えてしまうと」


嗣実さまは、苦笑しました。


「実際、彼女に合わせて無理をしていましたし。彼女自身も背伸びをしていました。柔らかい棘を守るには、幼すぎましたし」


嗣実さまは、軽く息を吐きました。


「こうして、いろはさんといる時のように、穏やかな気持ちにはなれませんでした」