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コンコンッ





静かな空間に響くノック音。






一体、私はここに何回来たのだろう。






あまり来ることがないであろう、この場所に。







「どーぞー。」






ノックの後に必ず届く低い声。






聞き慣れたその声は、すんなりと私の耳へと流れてくる。







気分によって低さが変わるんだけど、今日みたいに少し低くて甘みがかかった感じが一番好きだなぁ。






「ふぅ……」





小さく息を吐いて、ゆっくりとドアノブを握る。





―――ガチャッ







「…失礼します。」







ドアを開けた瞬間、コーヒーの香りが鼻をかすめた。







先生達がいつも飲んでいるコーヒー豆の香りで、甘い匂いが混じっていないということはブラックを飲んでいるのだろう。







「おぅ片瀬か。どーぞ、中入って。」







「あ、はい。」








開けたドアから一歩中へ入る。







すると、コーヒーの香りが更に濃くなった。








バタンとドアが閉まる音を確認し、下へと向けていた視線を上へと向ける。







「…………。」







私の目にうつるのは、ソファーに座る先生。







いつもはジャージだけど、今日だけは珍しいスーツ姿で。







スーツもピンクのネクタイも全てが似合いすぎていて、つい目が釘付けになってしまう。









「…んで、どうした?部活の顧問に最後の挨拶でもしにきたのか?」








「え?あ、や…ちが…」







「ん?違うのか?じゃあ何しにきたんだ?」








…これは、どんな状況なのだろうか。







先生は私に何を求めている?







え、何すか?







何プレイですかっ、これは!!?