音がするキッチンに走りこんでいくと、目を丸くして驚いている先生が目に入る。





焦る私に驚く先生。






包丁を持つ手も動きが止まっている。






「あ、その…ごめんなさい。私寝坊しちゃって…」






「……ふはっ、焦りすぎ。」






「でもっ…」






下を向く私に、先生がゆっくりと近づく。





そして、ゆっくりと私の頭に手を置き優しく撫でた。






「いつも頑張ってるんだから、今日ぐらいゆっくりしていいんだよ。」






「…せんせ。」






優しく笑う先生に胸がキュンとする。






その笑った顔を見てると、身体がポカポカして抱き締めたくなるんだよね。






「明日からまたバイトなんだろ?」






「はい。」






「じゃぁ、今日は二人でゴロゴロしような。」






「はいっ!!」







さっきまでのモヤモヤが消えて、嬉しい気持ちが溢れてくる。






毎日のバイトは自分の為にやってる事なんだけど、ご褒美が貰えるのはやっぱり嬉しい。






まして、最近は先生不足で寂しかったから一緒に過ごせるなんて幸せすぎる。







「とりあえず着替えてこい。昼飯作っとくから。」







「はーい。」







私の返事を聞いてから包丁を持ち直した先生。






その姿を横目で見ながら、寝室へと戻った。







「…………。」






なんだろ、何か引っかかる。







さっきまであんなに笑っていたはずの先生が、私から目を離した瞬間とても寂しい目をしていた。






それに、家で過ごすだけなのにジャージじゃなかったし…。







黒のポロシャツにジーンズの長ズボンなんて滅多にしない格好を、何故しているのだろうか。







何か、私に隠してる…?