「…今日は沢山私の為にしてくれて、私が嬉しい事ばっかり。そんなにかっこつけるなんてズルいです。」





「だから…仕返し?」





「そうです。」





うーん、仕返しと言われてもすごい嬉しかったんだけど。





伊緒からのキスは滅多にないし…逆にご褒美じゃないか?





「なぁ、俺そんなに色々したっけ?迎えに行ったくらいだろ?」






横井と進藤先生の事は伊緒が関係してるわけじゃない。






他になにか…





「守り抜いてくれるんですよね?」





「っっ!!!!!?」





驚く俺の顔を見てニヤッと笑う。





伊緒…あの話し聞いてたのか。





わざと早めに行ってバレないようにしたのに…。





「卒業したら、ちゃんと迎えに来てくださいね。ふふっ」






「っっおま…やめろ!!言うな!!」






「いやですーだ。」






「あっ、まて!!」






いつもより無邪気に笑っているように見える伊緒の顔。






捕まえようとする俺の手をスルリと抜けて部屋の隅へと逃げていく。






いつもと立場逆転。





今日は伊緒がSのようだ。





「……いい加減にしないと、襲うぞ?」





「ぎゃっ!!」





だがしかし、そんなのは許さない。






Sは俺の居場所だから。





「…先生、ご飯食べましょ?」






「……そうするか。」





仕方がない、その上目使いに免じて許してやるか。





机に向かう伊緒を見ながら、窓を開けてみる。





七月の蒸し暑い風が身体へと触れた。







二人の夏休みが、今日から始まる。