「マグカップどこだろうな。」






「そう、ですね…」






まるで今の状況は夢みたいだ。






人前で先生と手を繋いで歩いているなんて…。







「おっ、あそこじゃないか?」







先生、あんなに前の事を覚えていてくれたんだね。






私が一年生の時にした、小さな約束。






確か部活の買い出しと称して、オムライスの材料を買っていた時だったよね。





あの時は学校が近くて名前で呼ぶ事すらできなかったのに。






そういえば、あの時も先生の言葉にドキドキしたっけ。





少し照れながら『今度は遠くのスーパーに行こう』って言ってくれた先生の顔、可愛かったなぁ。






先生は私をドキドキさせてくれる天才だね。







「おい?どうした?」






「…ありがとう、せ…翔也さん!!」








私の方に振り返った先生に、笑顔を向ける。







握られている手にも、少し力を込めた。