コンコンッ




午前の部終了後、教官室のソファーで寝転がっていると誰かがドアをノックした。




「はーいって、おぉどうした?」



「甲田先生…。」



ドアを開けると、そこにはさっきの男子生徒の姿があった。



転んだせいかティーシャツがそこらじゅう砂だらけだ。




「さっきは…ほんと、ありがとうございました。」






顔を赤くしながら俺に頭を下げるこいつが可愛くて、なんだか胸の奥がジーンとする。




きっと、俺の所にくるのめちゃくちゃ勇気いったよな。




でもきちんと伝えにきてくれて…お前めちゃくちゃ良い奴だな。





「ちょっと待ってろ。」




「え…?」




普段はこんな事しないけど、今日だけは特別に。




教官室の中に入っていき、冷蔵庫からオレンジジュースの紙パックを取り出した。




「俺こそ運んでくれてありがとなっ!!これご褒美!!」



「!!!!…でも、先生は…」



「はい終わり!!もう今回の事はこのジュースで貸し借りなしなっ。だから俺が足つった事も忘れてくれよ?」




「……ふはっ、了解っす。ごちそう様です。」




「おぅ、じゃーな!!」



それから俺に失礼しますと頭を下げてから、男子生徒は友達の所へと走っていった。




片手に俺が上げたオレンジジュースを持ち、友達と楽しそうに笑いながら歩いていった姿を見て、すごく安心した。




楽しいはずの体育祭が嫌な思い出で終わらなくてよかった。




あの笑顔なら、あいつはもう大丈夫そうだな。