「はははっ確かに伊緒の言うとおりかもな。」




あれれ?先生が笑ってる。



てっきり深刻な顔でもするのかと思ってたから、その反応は意外だったな。




「伊緒と同じように大人になんかなりたくない奴は沢山いるだろうな。」



「うん…。」




私だけじゃないよね。




この時が永遠に続いてほしいと思ってるのは。




「でも、俺は大人になってよかったと思ってるよ。」




「そうなんですか?」




「まあ、昔が羨ましくなる時はある。でも戻りたいとは思わないよ。」





さっき私が割ってしまったマグカップの破片を拾う先生は、どこか誇らしげに見えて不思議な気持ちになる。




落ち着いてて、優しくて。




あぁこれが大人なんだなって私に教えてくれてる気がした。