「知らなかったじゃすまされん。ボウズ、お前だってケイタイを持っているだろう? 木で作った家に住んでいただろう?」
「それが、世界を壊すこと?」
「そうじゃ。昔はもっと酷かった。物を作っては捨て、作っては捨て……人間は偉くなったと勘違いしておった。」
「偉くないの?」
「自然を怒らせたら、人間はあまりにも無力じゃ。地震に勝てる人間なんて聞いたことない。雪崩を止められる奴もおらんじゃろ。」
「…………。」
「生きていく環境を取り上げられそうになってから、助けてくれ、悪かったと思っても手遅れじゃ。」
「神様が、いるじゃないですか。」
 僕はおじいさんを真っ直ぐ見つめて言った。おじいさんは悲しそうな顔で僕を見た。
「神様か……神は救ってなどくれんだろう。」
「どうして?」
「神なんていないからじゃ。」