真理がお姉ちゃんになることはなかった。その日の夜から世界は壊れ始めた。
「真理、どこだ!」
 大きな地震がきた。真理と一緒に逃げたはずなのに、気付くと右手の先に真理の左手はなかった。今度は逃げてきた道をひたすら戻った。
「真理……真理っ」
 通る道には人がたくさん倒れていた。家も壊れて、ぽつぽつと火事が起きていた。十一月だと言うのに汗が出てくるくらい外は暑かった。
 血の臭いがした。鉄のような錆びた臭い。肉が焦げる臭い。
 悪臭……死体……呻き声……
 ――まさに地獄絵図
「ま……り……」
 どのくらい真理を探して走り回ったかわからない。朦朧とする意識の中で真理の声がしたような気がした。
「神様を、探して。」
 ……神様?
「好きな人が出来たら、ロマンスの神様にお祈りするの。」
 好きな、人?
「ずっと一緒にいられますようにって……」
 一緒に……? 世界は、終わるんだ。そんな時に?
「そんな時だから、一緒にいてあげて?」
 誰、と? 好きな人?
「ゆりお姉ちゃんと、一緒にいて?」
 ゆりと?
「探して?」
 さが……す……