「お兄ちゃん、知ってる?」
「何を?」
「世界はなくなるんだよ。」
 真理はその言葉の意味を理解できているのかどうか定かではないが、自信満々にそう言った。
「何で世界はなくなるの?」
「人間のせいだって。チキュウが怒ったからだって。」
「それは誰が言ってたの?」
「裏の隣のお婆ちゃん。」
 前村さんの家のお婆ちゃんのことだ。真理はしょっちゅう前村さんの家に行ってはそこのお婆ちゃんに遊んでもらっていた。
「真理は、世界がなくなったらどうする?」
「わかんない。」
 そう言って笑った。真理にとってはそんなに大きな問題ではないらしい。意味がわかっていないから笑っていられるのだろう。
「ねぇ、真理の誕生日、お婆ちゃんがお菓子くれるの。」
「そっか、明日で六歳だもんな。」
「お姉ちゃんになるんだよ。」