最期の時に僕は夢見る

 人間って不思議なもので最初きついと思っていた死臭も死体も毎日嗅いだり見たりするうちに慣れるものだ。
 もう僕には何が悪くて何が残酷なのかもわからなくなっていた。
「ゆり……」
 最後に食べ物を口にしたのはいつだろう? 不思議とお腹は減っていない。ただゆりに会いたくて僕は歩き続けた。もうゆりのこと好きなのかどうなのかもわからない。でも会わなきゃいけないと思った。そんな変な使命感に動かされていた。真理の声が言ったから? そうでもない。この気持ちはなんて言ったらいいのだろう?
「時間が、ない……」
 焦りにも似たこの衝動。ゆりと一緒にいなきゃいけないと思う心。
「……ゆり、神様に祈ろう?」
 一緒に平和を祈ろう。そして誓おう。
「この星をいじめないって……」
 そうすれば、この世界は終わったりしないはずだから。
 馬鹿げた夢だと笑われるかもしれない。それでも僕は夢を見たい。ゆりと一緒に静かな時を過ごしたい。もしかしたら、一緒にいるのはゆりじゃなくてもいいのかもしれない。誰かと一緒にいたいんだ。僕は、一人じゃ生きていけないから……