最期の時に僕は夢見る

 歌が聴こえる。
 昔、僕らの星を救ってくれた歌い人と言う人がいたと聞いたことがある。歌を歌いこの星を直し、助けてくれた人がいる。歌にはそんな不思議な魔力があるんだと僕は感動した。
「生きてる?」
 目を開けると僕の手を握っていた女の子がそう聞いてきた。
「生きてる。……あの、歌……」
 歌い人のことを聞こうとして、この子がそんなに昔のことを知っていそうでないと思い聞くのをやめた。
「歌? うるさかった?」
 と女の子が言った。
「君が歌っていたの?」
「そうよ。」
 僕はそれ以上何を聞いたらいいかわからずに黙って女の子を見た。
「もう、怖くないでしょ?」
「え?」
 女の子の質問の意味がわからなかった。
「あなた、うなされてたのよ。」
 そう言われてさっきのメガネを持っていないことに気付いた。メガネの代わりに女の子の手を握っていた。さっきの出来事は夢だったのか。
「もう、大丈夫。」
 僕がそう答えると女の子は笑った。そして、僕の知らない歌を歌った。その澄んだ声を聴いて僕はこのまま世界は助かるんじゃないかと思った。
 誰かが隣にいてくれると言う安心感から僕はまた寝てしまった。