最期の時に僕は夢見る

 気付けば僕は寝ていた。何もない草原で、僕一人。
 おかしい。
 誰もいない。
 誰もいない。
 誰もいない。
 ただ穏やかな草原が広がるばかり。
 死体すら僕の前から消え去った。
「みんな……どこ?」
 僕はあれほど見たくないと思っていた死体を求め、走った。ずっと走った。途中で転びそうになったけど絶対足は止めなかった。
「誰かっ……」
 一人は、恐怖。
「誰か、助けて!」
 もう神様には祈らなかった。それでも、どこまで行っても誰もいない。息が苦しくなっても足が痛くなっても走り続けた。血潮の海でもしゃれこうべでも、なんでもいい。生きていなくてもいい。人のそばにいたい。僕の足に何かが当たった。
「め……が、ね?」
 僕はそこで足を止めた。
「めが、ね……メガネだ……」
 力一杯、人の証を抱きしめた。
「あぁ……よかった……」
 僕は何がよかったのかもわからないけど、安心した。そして嬉しくて涙が出た。