初恋未満

 携帯の電源を切って僕は先輩についていった。後で幹事の守屋から怒られる覚悟をした。先輩も携帯の電源を切って、友達に殴られるかもと冗談っぽく言った。
 そして、目的地に着いた。
 かなり見慣れた校舎が目の前にあった。
「先輩、ここは……」
「懐かしいでしょ? 高校。って、千葉くんはまだ卒業したばっかりか」
 先輩は嬉しそうに校庭に足を踏み入れた。
「懐かしいですけど、どうしてここなんですか?」
 僕はもっと遠くへ行くのかと思っていた。まさか高校に来るなんて思ってもみなかった。
 だって、ここは……
「私、高校生だった頃に戻りたいから」
 そう言った先輩の目は少し悲しそうだった。
「地元も好きだけど、やっぱりここが一番好き」
 先輩は笑ってそう言ったけど、僕には悲しみを精一杯押さえ込んでいるようにしか見えなかった。
「先輩……」
 僕は言ってはいけないことを言いそうになる。