自然に囲まれているけど、家に虫がいっぱい出る。みんな車で移動するから空気はそんなに綺麗じゃない。その上、店もほとんどない。今日もまだ夕方だってゆうのに、もう暗くなり始めている。街灯がないから夜道は本当に危ない。
 この田舎が東京に勝てるものなど何もない。
 それに、思い出したくないことまで思い出してしまう。
 来年の夏休みはもう帰ってこないかもしれないなと思いながら僕はぼんやりと電車を待った。
『まもなく電車が参ります。白線の内側でお待ち下さい』
 やっと来た。僕は立ち上がり伸びをした。
 四両しかない電車がやってきた。この駅から乗る人は僕を含めて三人しかいない。
 電車に乗り込んで空いている席に座った。どうせすぐに降りるけど。
 ふとドア付近を見ると、そこに立っていた綺麗な女の人が僕に微笑んだ。
 誰だ? 知っているような気もするけど……
 会釈をされたので返すと女の人は僕に近づいてきた。