たった一駅先に出掛けるために僕は長いこと電車を待っていた。ベンチに座ったまま何もすることがないので余計に長く感じる。
 都会の一駅なら歩いてしまうが、僕の田舎の一駅は歩くと一時間以上かかる。とても歩く気になれない。
 この田舎では電車は二時間に一本。過疎化が進む一方だ。
 僕はこのまま同窓会へ行くのをやめてしまおうかなんてことを考えた。もう会費を払ってしまったから行くけど。
 飲む予定がなかったらバイクで行くところだったが、今日は何だか飲みたい気分だったので電車を選んだ。
 今日じゃなかったら、そんなことは思わなかったのだろうけど。
 僕は帰ってきたことを少し後悔していた。
 せっかく大学も夏休みだしバイトを休んで実家に帰ってきたけど、田舎は不便だ。
 コンビニがない、スーパーだって歩いていくには遠すぎるし、一軒しかない。病院もない。電車もバスもめったにこない。
 少し前まで僕にとってそれは当たり前のことだった。僕は生まれてからずっとこの田舎から出たことがなかった。コンビニがなくても、電車やバスが二時間に一本でも不便だとは思わなかった。
 大学進学と共に東京で一人暮らしをするようになってから、僕は田舎が不便であることを知った。
 それから、何となく田舎のことを嫌だと思うようになってしまった。大好きだったはずなのに、人に田舎のことを話すことはなくなった。
 とてもじゃないが人に自慢できない。