初恋未満

　元気に走りながら手を振った俊哉しか思い出せなくて、僕はベッドの上に転がって「俊哉が死んだ」という言葉の意味を考えてた。どれだけ考えても、意味がわからなかった。
　それから俊哉は何日経っても学校に来ないし、会えない。来たくても死んでしまったから来られないんだ。俊哉がいなくなってしまってから二ヶ月経って、やっと僕は俊哉の死を理解した。
　今も、俊哉が死んでしまったと思うだけで息苦しくなる。
　僕にとって俊哉は大切な友達だった。友達というより、空気のように、僕にとってなくてはならない存在だった。
　だから、僕は俊哉がいたことを忘れようとした。
　もしかしたら、今日先輩に会ったのは、俊哉が引き寄せたからではないだろうか。俊哉のことを忘れようとしている僕に、ちゃんと思い出せと言っているのかもしれない。
　僕はぼんやりそんなことを考えながら歩いた。