初恋未満

 何よそれ、と先輩は僕に軽くパンチしてきた。僕はパンチを受けて大袈裟に痛がってみた。大袈裟すぎと言って先輩は笑った。
「ねぇ、今日命日なの、覚えてた?」
 しばらくパンチを繰り出してきた先輩は、僕が俊哉に何を言い損ねたのか追求するのを諦めたらしく再び校庭を歩き始めた。
「知ってますよ」
 僕は先輩の後ろを歩いた。
 二年前の今日、俊哉は死んだ。信号無視のトラックに轢かれて、あっけなく死んでしまった。僕は俊哉が死んだと俊哉のお母さんから電話をもらったとき、俊哉に頼まれて冗談を言ってるんじゃないかと思った。
 信じられなかった。
 いや、信じたくなかっただけかもしれない。