初恋未満

 黙って僕と先輩は夜の校庭を歩いた。
「俊くん、いつも千葉くんの話ばっかりしてた」
 気まずい雰囲気を壊すように先輩は明るい声で言った。
「すごくいい奴で、俺の自慢の友達だって」
 そう言いながら先輩は振り向いた。
 俊哉……
「僕、そんなにいい奴じゃないです」
 ごめん、俊哉。
「謙遜しなくてもいいのに」
 先輩は優しく微笑んでくれた。でも、僕は謙遜しているわけではなかった。
「そんなんじゃないです」
 違うんです。
「僕、俊哉が死んだって聞いたとき、ちょっと安心しちゃったんです」
「え?」
 先輩が立ち止まる。僕も先輩と一定の距離を置いて立ち止まる。