生まれて、物心ついた頃からの記憶が全てある。どんなに忘れたと思っていても、何年の何月何日何をしていたか聞かれれば僕は迷うことなく答えられるだろう。誰とどんな会話をしたか一言一句間違えず言えるだろう。

――― 怪物・変人・宇宙人

 それが僕の今のあだ名。
 僕が僕のような天才を見たら同じように僕のことを避けるだろう。とても人間には思えないだろうから。
「あれぇ? 何で?」
 僕が下らない感傷に浸っているうちにドアの方からのんきな声がした。誰も来ないと思ってドアに鍵をかけなかったのは失敗だな。
「あっ、時永君。」
 のんきな声の主、春山が僕に気付いて僕に近づいてきた。
「偶然だねぇ。夏休みなのに」
「春山は部活?」
「えへへっ……あの、部活、明日だって」
 春山は少し恥ずかしそうにそう言った。わざわざ夏休みに部活の活動日を間違えなくてもいいと思うんだけど、春山はそうゆうところが抜けている。
「時永君は? 屋上に日焼けしに来たの?」
 春山の頭は大丈夫だろうか……? 学校の屋上でフェンスを乗り越えて反対側にいる人間のすることなんて一つしかないだろう。
「日焼けじゃないよ。」
「はずれ? うーん……あっわかった!」
 春山は鞄からはみ出していた人形を引っ張って携帯電話を取り出した。