僕は病院のベッドの中で期待していた。僕は強く頭を打った。その衝撃で僕は馬鹿になりたかった。きっと天才でなくなればお母さんは僕と話をしてくれる。クラスの子も普通に話したり、遊んだりしてくれるはず。毎日そんな幸せな夢を見た。痛かったけど、堂本博士に感謝した。そしてテストを受けたりしながら何日か経過した。
「先生、僕の知能指数はどうなりましたか?」
 僕は中々知能指数低下の知らせが来ないので自分から担当医に問い合わせた。
「どうって……」
 僕の聞きたいことがわかったようで先生はうつむいた。僕は馬鹿になったに違いないと思った。
「君の知能数値は今まで以上に上がったとみられている。」
 僕はその言葉の意味を理解できなかった。……いや、理解したくなかった。
「今までの正確なデータがないし、君の知能を正確に測れるほどの試験もないからあくまで推測だけど、打ち所がよかったんだろう」
 頭の中が真っ白になった。僕の夢はもう叶うことはないのだろう。僕が天才である限り普通に誰とでも話し、笑い合える日はきっと、来ない。

 最後の希望を失った十歳の誕生日のことだった。