浩輔には感心だわ。


というか……

離れなさいよ柏原。


あなたは、密着しないでも私の行動パターンは読めるでしょ?

柏原の腕をバシバシっと叩くと、執事は慌てて私を解放する。


「じゃあ、今度は麗香ちゃんと一緒に」


浩輔が麗香の腰に腕を回す。


「ちょっと! 茉莉果は、気を使って消えなさいよ!」

シッシと邪魔者のように手で払われる。


それじゃあ、まるで私が気の利かない女みたいじゃない。


「麗香には浩輔は無理よ!」

だいたい麗香には執事がいないじゃないの!

彼女の家には料理人、メイド、運転手といった各分野に専属の使用人がいる為に執事は必要ないのだ。


執事とは、本来そのような使用人を統治する役目にあるのだけど……私みたいに手の掛からないお嬢様には、執事が一人いれば充分なのよ。


そんな素敵な執事になりたいからこそ、浩輔は私に声をかけてきたのでしょ?

邪魔なのは、正直麗香よ。


「無理って……茉莉果こそ身の程をわきまえなさいよ!」