麗香の家系は旧財閥の血筋で、いくつもの事業を展開していて日本の長者番付の上位には必ず名前が載る家だ。

それを目当てに……彼女へと群がる輩は後をたたないのだろう。


それを麗香は酷く嫌がっているけどね……


麗香の隣をキープしている男は話題の若手代議士だ。

確かに麗香と結婚したら選挙資金に困る事はないだろう。


「麗香ちゃんって、すごいお嬢様なんだね? 知らないで来ちゃったよ。麗香ちゃんと初めて会ったとき。すごいスピードで追いかけて来て『どーしても来て欲しい』って言われたから寂しい子なのかと思ってた」


「麗香は寂しい子よ」


私達は似ている。


華やかで優雅な日常には、孤独が潜んでいる。

あの代議士だって……麗香個人に興味があるわけじゃないもの、能無しの麗香だってそれは理解しているはずだ。


「それにしても、追いかけてくるなんて怖かったでしょう?」


麗香ったらどれだけ男に飢えてるのよ。本当に、可哀想な女。

ふふっと笑うと……

柏原が「お嬢様も同じような事なさってますよ……ナツ様に」と呟く声が聞こえてきた。


「麗香と一緒にしないでよ!」


ナツは、自分の意思で私と向き合ってくれてるのよ!

私が、横にいた柏原に文句を言ったのを、浩輔は驚いたようだ。


「ああ……これは、私の執事の柏原」

邪険に指を差して物みたいに扱っても柏原は嫌な顔をしない。

それどころか浩輔に丁寧に頭を下げる。


「しっ……執事? 今流行りの?」


「流行ってるの? それは知らないけど、柏原は執事よ」


浩輔は、未知との遭遇を心から喜ぶように、なんの疑いもなく柏原に手を差し出した。

「うわぁ! 凄いな! 会えて光栄です!」

そう言うと、浩輔は手をとり握手したので柏原が一瞬怯だようだ。


確かに、執事が握手するなんて事は希だ。