こんな料理の選び方しなくてもいいじゃない!
あっちで美味しそうな湯気を上げるビーフストロガノフや、スパニッシュオムレツの方が私は好きなのに!
フォークで器用に、ちょこんとあるキャビアをすくいサーモンと食べる。
残念ながらオニオンスライスの味が染み込んでいる。
最悪……執事失格ね。
いつかクビにしてやる……
次の執事は性格で採用を決めてやる。
「茉莉果ちゃん」
私がオニオンスライスと、にらめっこしている場面に天の救い主の声が響く。
「浩輔っ!」
なんて良いタイミングかしら。
作者に感謝ね。きっと作者もオニオンスライスが苦手なのね?
「良かったら、少し話せない? 今日、彼氏きてないんでしょ?」
浩輔は人懐こい笑みで、広々としたソファーに座る私の隣に腰をかけた。
「ええ、私も話をしたいわ」
「よかった」
私は、キャビアとサーモンのなくなったオニオンスライス山盛りの皿とフォークを、会場の使用人に「これ下げて」とお願いをする。
やったわ!
さよなら
オニオンスライス!
柏原の残念そうな、ため息が聞こえてきたけど……執事の彼はソファーの横に立ち、私の命令がないと動けないもの。
しょうがないわよね?
ふん、後悔してなさい。
「麗香はもういいの?」
「だって……ほら」
浩輔は、会場の使用人からシャンパーニュのグラスを二つ受けとると、その一つを私に手渡す。
カチリと、ぶつかるグラス越しに麗香の姿を探す。
すると、彼女は沢山の人に囲まれて愛想笑いを振り撒いている最中だった。



