「茉莉果様、ご友人との会話に勝ち負けを決めるのは下等な事でございます。しかも"押し倒した"などと品がない」
柏原は恨みがましい視線で私を睨みつけてきた。
「だって……」
遠心力から解放されつつある私は、髪の乱れを直して執事を睨み返す。
品がないのは、麗香のせいよ。合わせてあげてる私の身にもなってよね!
「料理を運んで参りますので、しばらくお待ち下さい。せっかくいらしたのだからパーティーを楽しまれてはいかがでしょう」
呆れたように、ため息をつきながら柏原は一礼をして料理が並ぶテーブルへと足を向けた。
それもそうね……楽しみましょう。
浩輔はどこにいっちゃったのかしら?
彼がいたらパーティーが、とても楽しくなれそうね。
だけど、麗香に尻で飛ばされて今頃宇宙の彼方で泣いてないかしら?
会場を見渡してみても、その姿はない。
私の執事が、優美な姿でお皿を受けとる姿が目に入る。
一流料理人のような手付きで、私の大嫌いなオニオンスライスを山盛りにしていた。
その頂にスライスされた生サーモンが飾られて頂上に、控え目にキャビアがちょこんと乗せられるようだ。
一見、高級イタリアン料理にも見えるが、ほぼオニオンスライス盛りと称していいようなプレート造りをしているのだ……
そして執事は、微笑む。
「さぁ、茉莉果様……料理が冷めぬうちに、お召し上がりください」
横から体制を低くした柏原が目の前にそれを差し出す。
だけど、手渡されたシルバーのフォークが威圧的……
「冷めるも何もオニオンしか……」
「好き嫌いをしていては、成長しませんよ? 心も身体も、私は貴女の健やかなる成長をとても楽しみにhしております」
柏原は、孤児を見つめるような哀れな目をして特大のため息を吐く。
「食べるわよ!」
オニオンスライス山盛りキャビア添えを奪うと、フォークを握りしめる。
すると、恨みを晴らしたように勝ち誇った執事がそこにいた。
ム……ムカつくわ……



