「麗香ちゃん!」


 熊を完全に見送った私達の元に、一人の男がフワフワとした茶色い髪を揺らして近づいてくる。

 細いラインのストライプジャケットに、薄いピンクのシャツ。

 普通はセンスが悪くなるか、田舎臭くなる組み合わせを、彼はスタイリッシュに都会的に着こなしている。なかなかね。

 華のあるその外観に、引けをとらない自信に溢れた顔立ちは、誰がなんと言おうと……かなりのイケメン!!



 嫌だわ……

 こんな短期間に、重要文化財レベルのイケメン二人に出会うなんて困った。



「お誕生日おめでとう。麗香ちゃん」


 ニコッと柔らかな笑みを浮かべて、女の子なら誰もが喜ぶような可愛いブーケを差し出す。


「本当に来てくれたのね! 浩輔くん」


 麗香のカラスみたいな声が、スズメのように可愛らしいものに変化する。


「当たり前だよ。女の子のバースデーパーティーに招待されたら来ないわけにはいかないよ」


 ニコニコと笑う彼から、脳内麻薬分泌中の癒しオーラが漂う。

 黙って事の成り行きを見ていた私に、麗香はフンと勝ち誇ったような顔をする。

 まあ、憎たらしい!



「こちらは、浩輔くんよ。最近、運命的な出会いを果たした男性よ」


「運命かな? 麗香ちゃんに街で逆ナン……」
「浩輔くん! コチラが、茉莉果、性格の悪そうな顔してるけど一応私の親友よ」