「柏原に触らないで! そうだ、麗香の為に素敵なプレゼントを用意したのよ。もうすぐここに届くはず……あっ! あれよ!」
麗香が視線をそらした隙に、慌てて柏原の腕を引っ張った。
これ以上触らせないわ!
私の柏原だもの!
入り口からは大きな包みを抱えた男性三名ヨロヨロしながらやってきた。
「プレゼントなんていいのに~気を使わないで茉莉果。今年は何かしら?」
わざとらしい謙虚さと、値踏みするような態度でその包みを前に腕組みする麗香。
腕を組むと、更に胸に深い谷間が出来たから……私も慌てて腕を組んでみたけど、リボンの位置がちょっと上がっただけだ。
柏原が「コホン」と咳払いした。
「麗香の為に、今年は特別なものを用意したわ」
麗香が指で合図を出すと、使用人達がやってきてプレゼントの包装を解く。
その隙に、柏原の腕に手を絡めようと手を伸ばすと……執事は逃げた。
なによっ……麗香の谷間の方がいいの? なんて薄情な執事かしら。
「茉莉果……」
ピンク色のオーガンジーの包装が取り払われて、中からプレゼントが姿を現す。
わざわざ日帰りで北海道まで行ってきたのよ?
ちょうど夕張メロンが食べたかったからいいけど結構骨の折れる旅だったわ。
ビロードの絨毯の上には、大きな木彫りの熊。
ちゃんと鮭を食わえているデザインで
首には、ピンクのリボンがついている。
「麗香、熊とかテディベアとか好きでしょ? だからコレしかないと思って!」
柏原は、片手で眉間を抑えて首を振り盛大なため息を吐いていた。
パーティー客も、関心して熊を見守っている。
クスクスと笑う人もいる。